新たなデータにおいて、中国が汚染度の高い資源よりも再生可能のクリーンなエネルギーを積極的に増やしていることが明らかになった。しかし、中国東部の住民にとっては転換のペースは十分ではない。大気汚染問題は北部で取り上げられることが多いが、今や東部でも石炭火力発電所の排ガスで空気はどんよりとかすみ、住民は息を詰まらせている。
国家エネルギー局(NEA)によると、今年1〜10月に新たに設置された発電容量のうち、再生可能エネルギーは57%を占めている。中でも水力発電が大きく増えた。NEAは4日にウェブサイトで、再生可能エネルギーによる発電容量は前年比20%増となった、と明らかにした。新規発電容量全体のうち、火力は43%にとどまった。
中でも水力が大きな伸びを示し、新規発電容量は22ギガワット(GW)と全体の3分の1弱を占めた。それに比べると風力や太陽光の新規発電容量はずっと少なかった。
大気汚染には自動車の排ガスや建設工事が巻き起こす粉じんなど、複数の要因が挙げられるが、専門家は、中国都市圏にとっては石炭火力発電所からの排ガスが大きな問題だ、と指摘する。
経済に活気があり、産業が高度に進んだ東海岸部ほど、この専門家の指摘がぴったり当てはまる場所はない。この地域には巨大な発電容量があるにもかかわらず、北部ほど大気汚染問題は取り上げられていない。風が煙霧を海に押し流していることもその一因だ。しかし、今週に限っては東部も北部も変わらないように見えた。濁った空気が東部の都市を覆い、上海市内の建物の輪郭はぼやけていた。大気汚染監視器の数値は一気に上昇した。
中国東海岸の富裕な都市では、通常ならかなり澄み渡った空を見ることができるが、今週に限っては東海岸全域によどんだ空気が広がっている。週末までに正常に戻る見通しも立っていない。
南京は5日に大気汚染を理由に学校を閉鎖、杭州は緊急措置を発表した。上海の当局は5日、濃霧を理由に児童に教室内にとどまるよう命じると同時に、空港サービスを一時的に停止した。上海市内の保護者は5日遅くまで、翌日に学校が臨時休校になるか否かの通知を待っていた。
上海にある米国領事館の監視局は5日午後の時点で市内の大気を「有害」と判断していた。日没前後には大気質指数は300を超え、夜には400を超えた。24時間にわたって数値はずっと「有害」の範囲内にあった。領事館の報道官はコメントを控えた。
上海の領事館は12年5月に監視局を立ち上げたが、これほど微粒子による汚染数値が上昇することはめったにない。大気汚染は北京でも大きな問題となっている。北京では700を超えたこともある。
上海市の住民でマッキンゼーのパートナーでもあるゴードン・オー氏は今週、大気汚染を受けて上海市の政策決定者の意識に「何らかの自己満足」が忍び込んできたのではないか、との懸念が頭をもたげてきた、と述べた。
中国は公害対策を国家的な優先課題にあげている。
上海市政府は10月下旬、大気の浄化を「最優先する」と約束した。大気汚染を食い止める新たな戦略、上海大気浄化行動計画を発表、自動車、発電所、各産業に対する規制を強化して12〜17年の5年間に粒子状物質を20%削減するという目標を掲げた。
(ウォール・ストリート・ジャーナル 12月6日)